
アルブレヒト・デューラー 3
1494年5月、ニュルンベルクに戻ったデューラーは、父の勧めで7月に結婚した。しかし、まもなく10月始めには、新妻を残し、工房開設の準備をしないまま、ヴェネツィアへ向かっている。遍歴職人としてネーデルラント文化圏を巡ったデューラーは、美術の完成のためには理論的な知識が必要で、それを古代から学んだイタリアの美術家から学ぶ必要があると考えたらしい。この考えによってドイツ・ルネサンスが始まることになった。デューラーは商人や人文主義者によってイタリアの版画類を見ることができた。マンテーニャやポッライウォーロの銅版画は、古代神話のテーマや自然な人物形態でデューラーに強い影響を与えた。その一方、デューラーはイタリア版画の肉付け法である平行ハッチングをショーンガウアーから学んだ交差ハッチングに変えて、明るさの陰影をさらに際立たせようとしている。
世界美術大全集14 北方ルネサンス
世界美術大全集14 北方ルネサンス
ヴェネツィアでヴェネツィア派の画家の作品を見たはずだが、滞在期間が短く、十分に学ぶことはできなかった。秋の往路で描いたと思われる「インスブルック光景」は「世界年代記(1493年刊)」での建物や山川を積み上げて奥行きを表す方法をやめて、低い視点から水平方向に遠近感を出す方法をとっている。イン川に映る家並みや光を現場の体験に基づいて描いている。翌年の帰路に描いた水彩「イタリアの山」は春の自然風景で、西洋絵画史で最も早く描かれた風景描写のひとつとされている。
人物略歴
デューラー4 5 6 7 8 1 2デューラー
インスブルック光景 1494〜95年
紙 水彩 12.7×18.7cm
ウィーン アルベルティーナ素描版画館
人物略歴
デューラー4 5 6 7 8 1 2
インスブルック光景 1494〜95年
紙 水彩 12.7×18.7cm
ウィーン アルベルティーナ素描版画館
