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木版画

ヨーロッパで木版画が制作されるようになったのは1400年頃だった。
文字が筆写された羊皮紙に多色の顔料で挿絵が描かれた豪華な写本は、少数の富裕で教養のある人々のものだった。しかし新たな文化の担い手として都市市民が現れると、多くの複製が安価に提供される版画が求められるようになった。中国で発明された紙は、アラブ人世界(コーランを筆写するのに使われた)を経て、十字軍などによってヨーロッパに伝えられ、14世紀には紙が生産されるようになった。
1400年頃、布地などの模様の型押しに使われていた捺染を紙に応用して、南ドイツ、オーストリア、ブルゴーニュ地方で木版画が作られた。初めはおおらかな線で輪郭がとられた人物像に色彩を施す素朴で簡略な図柄だった。聖人像が多く、旅の途中や家庭での礼拝や、疫病や不運から身を守る護符として、聖地や市で巡礼者に売られていた。
1430年代になると図と文字を同じ版木に彫る「ブロック・ブック」が考案され、「文盲者の聖書」、「安らかに死ぬための術(アリス・モリエンディ)」が作られた。
世紀中頃、グーテンベルクの活字を用いる印刷術が発明されると、木版画は挿絵として使われるようになった。1470年代にネーデルラントで「人間救済の鏡」、1486年にはマインツで「聖地巡礼」が出版された。挿絵の下絵を描くのは画家の仕事になり、デューラーも若い頃、ニュルンベルクやバーゼルで印刷業者のために働いている。世紀終わりには肉付けの陰影斜線(ハッチング)が使われるようになり、1498年にデューラーの「ヨハネ黙示録」が発表された。
(浮世絵も多色刷りの木版画)
ヴェネツィアの風景(部分)「聖地巡礼」
デューラー 四騎手「ヨハネ黙示録」
世界美術大全集14 北方ルネサンス ルネサンス 用語集